MARUHIRO × Takahiro Yasuda
本シリーズで展開するアイテムは、応量器をイメージして設計した5サイズのボウルとプレート。ボウル、プレートはそれぞれ入れ子式に重ねられ、またプレートは同サイズのボウルの蓋としても機能し、収納性や使い勝手の良さを備えています。
器の縁や胴部には、しめ縄やたが(箍)などかつて器を守るための梱包に用いられていた“しめる”道具に着想を得た、安田氏による黒一色の連続パターンが大胆に描かれています。そのグラフィックは、均整のとれた構造美と装飾性を併せ持ち、江戸後期の町人文化にみる機能を上回る強調した意匠性をグラフィックの視点で再解釈したものです。
このシリーズに通底するのは、「封じる・締める・包む」という日本の暮らしに根ざした所作の美。機能性から始まり、やがて装飾として愛されていった“たが”のように、「TAGAYA」は器としての実用性と、使い手の感性をくすぐるグラフィックが共存しています。
余白と深さ、均整の取れたバランス
22cmのボウルはメイン料理にもちょうど良いサイズ。シェア料理や具材をたっぷり使ったサラダ、麺料理などに。
同サイズのプレートはボウルのフタとしても機能しますが、食卓に並べて使うことで統一感が生まれ、テーブルの雰囲気もシックな装いに。また、各種サイズごとにグラフィックも異なるので、揃えて楽しめるコレクションです。
現代技術と手仕事の共存
柄部分は、立体形状にも対応できるパッド印刷による下絵付けで制作されています。ステンレスの板にシルクスクリーンで柄を刷り、その模様をシリコンパッドに転写。器のフォルムに沿ってパッドが変形しながらプリントを行うことで、多様な形状に正確に絵柄を載せることができます。平面から立体にプリントする技法のため、初期設定の柄合わせに時間と技量を必要とする技法です。
柄部分は黒い絵の具と撥水剤を混ぜて印刷しているため、施釉(釉薬をかける工程)の際に柄の上には釉薬がかかりません。その結果、柄はマットな黒の質感のまま、余白の白部分のみ釉薬で艶やかに仕上がり、地と図で異なる表情が生まれます。
また、フチの黒いラインは上絵付け技法による手仕事で、ろくろに乗せて1点ずつ筆で引かれています。プリントと手描きが共存し、伝統と現代のデザインが質感としても響き合うコレクションです。
古典落語 「たが屋」について
両国の川開きの花火見物で、両国橋は大勢の人でごった返している。花火が上がるたびに「玉屋(たまや)~!」と観衆の掛け声が飛ぶ。
そこに桶の箍(たが)を作る職人である、たが屋が通りかかるが、人々に揉まれてあちこち振り回されたあげく道具箱を落としてしまう。
その衝撃で中に入っていた箍が弾けて、同じく通りかかった侍の笠を弾き飛ばしてしまう。たが屋は平伏して陳謝するが、侍は許さず、手討ちにしようとする。たが屋は斬れるものなら斬ってみろと開き直り、気圧された供侍が斬りかかってくるが、相手の修練不足で逆にたが屋が刀を奪い、返り討ちにしてしまう。
そこで侍が槍でたが屋を手討ちにしようとするが、その槍をたが屋に掴まれてしまう。そこで侍は槍から手を離して刀で斬りかかろうとするが、一足遅く、たが屋に首を斬られる。
侍の首がスパーンと中天に飛び、それを見ていた見物人たちが言う。
「たが屋~!」
安田昂弘 / Takahiro Yasuda
1985年生まれ。獅子座。名古屋市出身。2010年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、株式会社ドラフトにデザイナーとして勤務。
2015年に同社より独立し、クリエイティブアソシエーション「CEKAI」にアートディレクターとして所属。ブランディング、アートディレクション、グラフィックデザインを軸に、デジタル領域やプロダクトデザイン、映像、空間などの領域の仕事にも広く携わる。
2015年より自身のグラフィックの新作展示を毎年開催するなど、セルフワークによる国内外での作品制作、発表も行う。身長は190cm。